Ongpin Stories

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("Ongpin Stories" by R. Kwan Laurel / Kaisa Para Sa Kaunlaran, Inc.)
・・・・というわけで、マニラの本屋さんでうろうろうろうろしながら買いあつめた少しだけの本を、結局マニラではちゃんと読めずじまいで日本に帰ってから少しずつ読んでいる。この"Ongpin Stories"はその一冊で、タイトルとノスタルジックな写真の表紙に惹かれて買ったのだけど、読んでみたらとても気に入って、それに薄いので2回読んでしまった。

この表紙の教会はマニラの中華街のビノンド教会でオンピン・ストリートのはじっこにある。そして著者はここで生まれ育った華僑二世で、この本は少年を語り手とし、たぶん1960年代くらいのオンピン・ストリートを舞台にした8つの短編集なのです。(てっきり著者の少年時代を書いたものだと思っていたら、フィクションのようです。でも、どうしてもかさねあわせて読んでしまいます。)




フィリピンの経済は、数%にも満たない華僑・中華系フィリピン人に支配されているという。例えば大型ショッピング・モールを展開するSMグループやファストフード・チェーンのジョリビーなども華僑系企業である。実際にマニラで接した中華系フィリピン人たちもとってもお金持ちそうだった。

それでなんとなく中華系フィリピン人ははじめからみな金持ちという勝手なイメージをわたしは持ってしまうのだけど、この本の主人公の少年の家庭は決して裕福ではない。少年の祖父と両親は多くの華僑がそうであるように福建の出身で、苦しい生活から逃れるため、"Streets of Gold"を夢見て厦門(アモイ) からフィリピンに渡ってきたのだが、ここには"Streets of Gold"など見つからない。オンピン・ストリートで細々と商売をしているのだけれど(父親が「Good Luck Hardware」という店を経営している)、精神面での大黒柱である祖父が失恋して厦門に帰ってしまい意気消沈しているところに、アメリカ大手ハードウェア・チェーンの進出で絶望的に商品が売れなくなり、家族で途方にくれるところで悲しくこの本の最終話が終わっている。

・・・こう書くとこの本は中国人のつまらない苦労話が書かれているかのように聞こえてしまうけど、全体的には中国人・フィリピン人ともに個性的な人物が生き生きと登場し、ユーモラスに描かれていて、でもなぜか常にもの哀しさがただよっているとてもすてきな作品でした。(わたしの読解力では、よくわからないところがあるので、誰か、読んでおしえてくれないかなあ・・・。)
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(Ongpin Street, Binondo, City of Manila)
わたしはなぜかマニラの中華街が好きでとくに目的もなくうろついた。方向おんちで道に迷うのでたいていこのオンピン・ストリートを基準に動くようにしていた。自分の歩きまわった小汚なく雑然としてどこか懐かしい香りのする(しかし、実際にはごみ溜めのようになったドブ川が悪臭を放っている)あの通りを思い浮かべながら、その数十年前の情景を想像してこの本を読む。それはとても不思議でぜいたくな経験でした。今まで説明がつかなかった、自分があの場所に惹かれる理由をこの本の中に見つけた気がしてうれしくなりました。これを読んだあとでいま、もう一度あそこに行ってみたくてムズムズしてしまいます。
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